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マグロ女は止まらない!

日記

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    スーツ姿が綺麗なバリキャリ*1のMさんが総務部に急ぎ足で入ってきた。

 

「仮払い、貰いに来たよ!」

「私、会社に来たばかりなんだけど?それに、まだ金庫開いていないよ?」

 

 経理課の金庫番役の女性であるFさんが困りながら答えた。

 

「知らないわよ。そんなの。私、急に新人研修の講師を頼まれたんだから。早くお金出してよ。部長に持ってこいって電話来たんだから!」

「ハイ、ハイ。今、うちの部長に金庫開けてもらうから、ちょっと待っててよ。部長ー!金庫開けて下さーい!」

 

 部長が金庫を開けて、手提げ金庫をFさんに渡す。

 

「早く!早く!」

 

 Fさんの横で落ち着きなく、ウロウロするMさん。

 

「もう、急かさないでよ!」

「いいから早く!」

「もう!我慢せずに行ってくればいいでしょ!」

「だから、お金をもらわないと行けないんだって!」

「用意するのに時間がかかるの!封筒と受け渡し表を用意しなければならないんだから!その間に行ってくればいいでしょ!」

「だ、か、ら!お金がないと行けないの!」

「だから、用意している間に行ってきなさいよ!」

「貰わないと行けないの!」

「用意しておくから、先にトイレへ行きなさいよ!」

 

 えっ?Mさんはトイレを我慢していたの?俺はFさんの気が短いだけかと思っていたんだが、違ったらしい。

 

「バカ!違うわよ!トイレじゃないわよ!恥ずかしい!」

「じゃあ、何なのよ?」

「私は止まらない女なの!止まると死ぬの!」

 

 ……いや、絶対死なないでしょ?じっと待っていても死なないでしょ?死なない方に100ドル賭けるよ!

 

「あんた、マグロみたいだね?」

「マグロ?」

「知らないの?マグロは止まると死ぬんだよ?」

「へぇ~。そうか、私はマグロだったんだ。ということはマグロ女ということ?」

「Yes、マグロ女!!!」

「イエェェェ~イ!!!ジャスティス!!!マグロ女!!!

 

 朝8時半。アラフォー女性二人が叫びあっている。そして、なぜだか、俺の会社にサンシャイン池崎がいる。俺は疲れているのかも知れない。もしくは夢を見ているのかも知れない。なんか、ツッコミどころが多すぎて、さすがに俺も朝からツッコめない。

 

 準備ができたFさんからMさんに仮払金が渡される。

 

「サンキュー!マグロ女、これから新人たちを鍛えに行ってきます!」

「おう、行ってこいマグロ女!」

「イエッサー!新人たちにマグロ女ですと自己紹介してくるよ!」 

「いいね!止まらないマグロ女M!格好いい!」

 

 Mさんが総務から勢いよく飛び出して行った。

 

 ちょっと待て、イエッサーはおかしいだろ?女性に対してなんだから、イエスマムだろ?いやいや、ツッコむのはそこじゃないな。『マグロ女』の部分だな。その表現は色々ヤバいだろ?

 

「Fさん、いいんですか?マグロ女とか言っちゃって。」

「えっ?なんで?止まらないからマグロでしょ?」

「マグロって、夜のアレですよね?」

「アレ?」

「性的なやつですよ。」

 

 マグロの意味を思い出したFさん。

 

「どうしよう?これヤバいよね。」

「ヤバいですね。このままだと、新人研修の自己紹介でマグロ女ですと言ってしまいますね。」

「電話しなきゃ。」

 

 Fさんは慌てて、Mさんの携帯に電話するが、車で移動中のためか電話に出ないらしい。

 

「ああ、殺される。私、Mちゃんに殺される……。」 

 

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 午後3時。Mさんが総務に入ってきた。それを見て、慌ててFさんが歩み寄る。

 

「ごめ~ん。Mちゃん、許して、気づかなかったの。本当に私ドジだから。バカだから。殴っていいよ。グーで思いっきり。それで許して!」

「えっ?何のこと?それより私こそ、ごめん。本社に帰ってきて、さっき着信に気付いたの。何のようだった?」

 

 FさんがMさんの耳元で『マグロ女』について説明する。

 

「な~んだ。そんなこと?なるほどね。私がマグロ女のMですと話したら、なんかみんな止まったんだよね。あの後、マグロは止まらないと説明したけど、意外とみんな知らなくて、知らなかったのは私だけでなかったと喜んでいたんだよ?」 

「本当にごめん。」

「いいよ、別に。大したことじゃないし。」

「あるよ。変なイメージ付いたら私のせいだよ。」

「そうかな?逆じゃない?自分からマグロだと言えるのは、体以外に自信があるということになんじゃない?ごろ寝していても男が飛びつくなんて、イイオンナということでしょ?」

 

 俺にはMさんの理屈がよく分からんけど、なんかMさん女性なのに男前だぞ!自称マグロ女って、もしかして格好いいのか?

 

「ちょっ。何?Mちゃん。格好いい!惚れた!」

「Fさん。今頃、私の魅力に気づいたの?」

「うん、今日からファンクラブに入る!」 

「私のファンクラブは入会金高いよ?そして、月額も貰うから!そして、退会は認めない!」

 

 何だよ。そのファンクラブ?金をむしり取る気満々じゃねーか?

 

「ちなみになんですけど、マグロ女の反対は、トビウオ女というんですよ?」

「あ~、始まった雑学博士ジンくんの誰も聞いていないのに語ってくるウザ学。」

 

 ウザ学!いや、確かに俺はウザいけど、それハッキリ言っちゃう?

  

「で?どっちなの?」

「何がですか?」

「ジンさんはマグロ?トビウオ?」

 

 そんなの答えられないよ!どっちに答えても俺のイメージ悪くなるじゃん!

 

ケース1『マグロと答える。』

「やっぱりね。なんか独りよがりのって感じするものね。」 

 

ケース2『トビウオと答える。』

「自信過剰!そういうこという人に限って下手なんだよね。」

 

 やっぱりダメだ!不自由な選択だ!

 

 「料理が上手い男は、夜も上手いらしいよ?」

 

 ここにきて、今まで沈黙を貫いていたS課長(女)が参加してきた。それにしても、うちの会社の女性はみんな下ネタ好きだな!

 

「そうなの?ジンくん、料理上手いよね?ということは、トビウオ?」

「何?ジンさん、料理上手いの?」

「あれ、知らなかったの?社内一だよ?」

「それじゃあ、社内一の男ってこと?」

「キャー、もう、ジンくんのH(笑)」

「やだ、ジンさん、セクハラ!人事課に訴えてくる(笑)」

 

 止まらないマグロ女たちの雑談は、もちろん止まらない。そして俺のイメージ低下も止まらない(涙)

*1:バリバリのキャリアウーマン